接触皮膚炎、アレルギーに関連して、パッチテストを行うことがあると思いますが、
ジャパニーズスタンダードという単語をよく聞くがいまいちよくわかっていない先生もいるかもしれないので整理しておきます。
ジャパニーズスタンダードアレルゲンJSAってなに?
ジャパニーズスタンダードアレルゲンJSAとは、(日本皮膚科学会ではなく)日本皮膚免疫アレルギー学会が選定した日本人で陽性率が高い原因物質のことです。
JSA は 1994 年に初めて選定され、2008 年 (JSA2008)と 2015 年(JSA2015)に内容の組み換えがありました。
現在最新のJSA2015は、パッチテストパネル(S)(佐藤製薬) と塩化第二水銀,ウルシオール(鳥居薬品)の24 種類のアレルゲンで構成されています。
パッチテストパネルとは、すでに試薬が染み込ませてあり、患者の背中にシートごと貼るだけでパッチテストが開始できる優れもの。昔は試薬をひとつずつチャンバー(小皿というらしい。Finn Chamber)に塗って仕込む必要があったので、だいぶ楽になりました。
佐藤製薬株式会社 | 医療用医薬品 より引用
大事なことなのでもう一度言い換えると、
佐藤製薬のパッチテストパネル(S)には水銀とウルシオールは含まれていません。
2019-94の過去問でこんな問題がでています。
パッチテストパネル(S)の説明書きにも【本剤はジャパニーズスタンダードアレルゲン24種類のうち、ウルシオール、塩化第二水銀の2種類のアレルゲンは含まれていません。】とある。
佐藤製薬のパッチテストパネル(S)の中身
パッチテストパネル(S) パネル1
硫酸ニッケル
ラノリンアルコール
フラジオマイシン硫酸塩
重クロム酸カリウム
カインミックス
香料ミックス
ロジン
パラベンミックス
ペルーバルサム
金チオ硫酸ナトリウム
塩化コバルト
パッチテストパネル(S)パネル2
p-tert-ブチルフェノールホルムアルデヒド樹脂
エポキシ樹脂
カルバミックス
黒色ゴムミックス
イソチアゾリノンミックス
メルカプトベンゾチアゾール
パラフェニレンジアミン
メルカプトミックス
チウラムミックス
※カインミックス:アミノ安息香酸エチル、 ジブカイン塩酸塩、テトラカイン塩酸塩
※香料ミックス:α-アミルシンナムアルデヒド、イソオイゲノール、 ケイ皮アルデヒド、オイゲノール、ケイ皮アルコール、 ヒドロキシシトロネラー ル、ゲラニオール、オークモス
※パラベンミックス:パラオキシ安息香酸メチ ル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸ベンジル
※カルバミックス:ジフェニルグアニジン、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛)
※黒色ゴムミックス;N-イソプロピル-N’-フェニ ルパラフェニレンジアミン、N-シクロヘキシル-N’- フェニルパラフェニレンジ アミン、N,N’-ジフェニルパ ラフェニレンジアミン
※イソチアゾリノンミックス :5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン
※メルカプトミックス :モルホリニルメルカプトベンゾチアゾール、N- 22 シクロヘキシルベンゾチアジルスルフェンアミド、 ジベンゾチアジルジスルフィド
※チウラムミックス :テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジスルフィラム、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド
試験対策として、どちらがパネルの1か2かは流石に覚えなくてもいいと思うのですが、JSA2015の内訳24種類と、JSA2015(24種)=佐藤製薬のパッチテスト22種+水銀+ウルシオール
ということは覚えます。特に、次に水銀を選ぶ問題がでたら正答率は高くなると思います。
どのアレルゲンが日常のどんな製品に使用されているか、どの食べ物に多く含まれているかを知ることは重要です。
日本皮膚免疫アレルギー学会が作った患者配布用の資料のpdf
http://www.jsdacd.org/docs/useful_info/patch_result_all.pdf
試験対策には「日皮会が作成したもの」が優先されるが、こちらの資料も目を通しておいて損はないと思います。
最近の傾向
日本では、2016年度は、硫酸ニッケル(陽性率24.8%),金チオ硫酸ナトリウム(23.2%),ウルシオール(10.0%),パラフェニレンジアミン(8.8%),塩化コバルト(7.9%)が陽性率が高くなっています。
2020-78の過去問では金について出題されています。(金の陽性率は2016年男性15.7%<女性25.6%)
また、化粧品で使用されているイソチアゾリノン系防腐剤の陽性率が高くなっています。
特に、JSA2015 になってから硫酸ニッケルと金チオ硫酸ナトリウムの陽性率が急増していることも特徴的です。
おわりに
いかがでしたか?
お読みいただきありがとうございました。
医師と患者のためのパッチテスト・アレルゲン解説松永佳世子編集、秀潤社
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/130_523contact_dermatitis2020.pdf