デルマ侍の皮膚科専門医試験 解答徹底解説

専門医試験解答解説勉強対策絡みのこと全て包み隠さず

MENU

化膿性汗腺炎と専門医試験〜e-learningから〜

f:id:DermaSamurai:20210513175400p:plain

イーラーニング、第119回総会 EL40-3 自己炎症性角化症としての化膿性汗腺炎

乃村 俊史 先生 (北海道大学病院皮膚科)を中心に

勉強したことをまとめます。乃村先生は専門医試験の出題委員の先生でいらっしゃいます。

化膿性汗腺炎

Hidradentis suppurativa HS

acne inversa  AI

 

定義 アポクリン汗腺の多い部位を中心

有痛性、排膿性の炎症を慢性的に繰り返し瘢痕化すること

日本と海外の呼び名の違い

日本では部位によって呼び方を変える

腋窩→ 化膿性汗腺炎

臀部→臀部慢性膿皮症

頭部→ケロイド性毛包炎

 

海外では、これらをまとめて呼称する

 

あたらしい皮膚科学では

慢性膿皮症のくくりなかに、

化膿性汗腺炎

臀部慢性膿皮症

ケロイド性毛包炎

と書いているが、

海外とあわせると今後はこれら全てを化膿性汗腺炎と呼ぶべき。

 

疫学

欧米では1%の罹患率

欧米では女性に多く、日本では男性に多い

青年期発症

喫煙や肥満の関係

 

病態

・細菌感染は二次的 メインではなし

・抗菌ペプチドが上昇していることがいわれている

・リンパ節腫脹なし

毛孔の角化異常、炎症の関与が指摘されている

・化膿性汗腺炎の30-40%に家族歴、常染色体優性遺伝

・化膿性汗腺炎の5%に遺伝子変異あり

・病院遺伝子座は19q13 PSENENピーセネンの変異

PSENENはγセクレターゼをコードする

他の遺伝子変異 NCSTN PSEN1 など

・γセクレターゼの基質はアミラーゼ前駆蛋白APPとNotch受容体

・γセクレターゼ阻害薬投与で化膿性汗腺炎様の皮疹の出現

・Notch1/2 KOマウスでは毛包の分化異常が起きる(過剰角化と嚢腫形成)

 

インターロイキン 炎症

・IL-1β IL-18 NLRP3 caspase-1 IL-6 IL-36 TNFα 上昇

→NLRP3インフラマソーム経路活性化

・CXCL1/CXCL6/CXCL8 上昇

好中球浸潤

・MMP1/3/8/10上昇 組織のリモデリングが活性化

→瘢痕、瘻孔形成

IL-17上昇、Treg:Th17インバランス

 

治療

・免疫抑制が有効

・抗TNFα抗体ヒュミラ,IL-17製剤が有効

 

関連する疾患、遺伝子

Dowling-Degos病POFUT1ポフット POGLUT1ポグルット変異による)でも化膿性汗腺炎を合併することがある

POFUT1 POGLUT1はNotch受容体に糖鎖を付与する蛋白

 

Pachyonychia congenita (KRT17KRT6A変異による)ではsteatocystoma(嚢腫)が多発

 

Nevus comedonicusFGFR2変異による)では角栓形成が多発

この2疾患も化膿性汗腺炎を合併することがある。

 

また、UC CD PG pyogenic arthritis spondyloarthritisなどの自己炎症性疾患を合併することがある

 

現在の最新の知見

・化膿性汗腺炎は細菌感染症ではない

角化異常と自己炎症が中心病態

・自己炎症性疾患 特に自己炎症性角化症であると考えられる

 

自己炎症性角化症とは

・2017年 名古屋大の秋山先生が提唱(北大におられた)

・特徴4つ

炎症の主座が表皮か真皮上昇

炎症により角化異常をもつ

遺伝子異常がある(←自然免疫の活性化に関わる)

自己炎症と自己免疫の側面をともにもつ

 

ヒュミラの投与スケジュール

f:id:DermaSamurai:20210514115513j:image

 

過去問

2017-33

問題 33.化膿性汗腺炎について正しいのはどれか.2つ選べ.
1. 慢性化しやすい.
2. 臀部に好発する.
3. 男性より女性に多い.
4. 糖尿病の合併が多い.
5. 抗菌薬は無効である.

 

答え12

1慢性化しやすいは正解

2 あたらしい皮膚科学など、昔の日本での定義は、慢性膿皮症と化膿性汗腺炎は別であり、イメージとし、

慢性膿皮症 男性に多く、主に臀部にできる

化膿性汗腺炎 女性に多く主に腋窩にできる 

であったが、

海外に合わせると、化膿性汗腺炎が大きな病名と考える方がいいとされている。

ガイドラインを見ると、日本の場合、(これまで慢性膿皮症と言われていたものを含めて)【化膿性汗腺炎の半分が臀部】とされているので、正解

これがあたらしい皮膚科学だけ読むと、

【化膿性汗腺炎は腋窩に多いので×】になってしまう

3 日本では男性に多く、海外では女性に多い

試験的には日本の疫学を選ぶこと ×

4 細菌感染が主体ではない。糖尿病合併が多いわけではない ×

5 抗菌薬が汎用されるが、病態の首座は免疫異常である。× 抗菌薬を使うとしたら、ミノサイクリンなどの免疫調整作用がある抗菌薬がいい

 

 

 

参考:

あたらしい皮膚科学P521

化膿性汗腺炎診療の手引き 2020(ガイドライン

化膿性汗腺炎におけるアダリムマブの使用上の注意/ 化膿性汗腺炎の診療の手引き(ガイドライン

第119回総会 EL40-3 自己炎症性角化症としての化膿性汗腺炎

乃村 俊史 先生 (北海道大学病院皮膚科)

 

乃村先生は専門医試験委員です。AIKDの秋山先生も以前北大におられて、乃村先生もご一緒に研究されていたと思われます。

note.com

 

2020年令和2年度皮膚科専門医試験解説です

note.com

 

おわりに

試験勉強はまずは過去問から。過去問のでている疾患の周辺を、日本皮膚科学会が関与している題材を中心に広く深く勉強していくとよいです。

勉強法についてはこちら。

note.com

noteもやっています。

note.com

 

点差が着くのは記述です!過去問をある程度さらったら記述対策もしていくといいと思います。

note.com

 

皮膚科専門医試験対策解答解説答え勉強

皮膚科専門医試験対策

 

Copyright ©デルマ侍の皮膚科専門医試験 解答徹底解説 All rights reserved.