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ステロイド糖尿病にはDPP-4阻害薬かGLP-1製剤が適している

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ステロイド糖尿病とは

皮膚科ではステロイドしょっちゅう出します。

ステロイド糖尿病になるケースをよく見ると思います。

多くは糖尿病内科に依頼するとは思うのですが、その病態について少しお勉強します

 

病態ざくっとまとめ

ステロイド内服するとグルカゴンを上昇、インクレチン減弱インスリン抵抗性上がることで、血糖値も上昇

 

ステロイド糖尿病の薬

よく使われるのは特にDPP-4阻害薬かGLP-1製剤

 

DPP-4阻害薬、GLP-1製剤

DPP-4阻害薬は、類天疱瘡の副作用のため、皮膚科医もみんな知っている薬。過去問にもでています。
GLP-1 受容体作動薬は, DPP4 阻害薬と同じくインクレチン関連薬に分類される薬剤

インスリン分泌刺激作用,グルカゴン分泌抑制作用、胃排泄遅延作用

食後血糖上昇の抑制

されます。

 

詳しくステロイド糖尿病の病態

ステロイドを飲む

インスリン抵抗性が上がる

・肝臓からの糖放出の亢進する

 

肝臓はステロイド糖尿病の中心病態となる臓器

肝細胞において、インスリンはホスホエノ-ルピルビン酸カルボキシラーゼ(PEPCK)の遺伝子発現を抑制するが、ステロイドはPEPCKの発現を上昇させることで糖新生を促進していることが知られてる

また、ステロイドは筋肉や脂肪組織といったインスリンに反応して糖を取り込む臓器において糖取り込みを抑制する

さらに

ステロイドは筋肉や脂肪組織の異化を亢進することで、肝臓に対して新たな糖新生の基質を送り込み、肝糖放出の促進

ステロイドインスリンの分泌能も抑制

さらにインクレチンの作用も減弱させる

 

これらの結果、複合的に血糖は上昇していまうのです

 

グルココルチコイド受容体KOマウスではステロイドを投与してもインスリン抵抗性が改善する

グルココルチコイド受容体KOマウスでステロイドを投与すると脂肪組織が肥大する一方で、肝臓への脂肪蓄積が減少し、インスリン抵抗性が改善することがわかっています。

 

グルココルチコイド受容体とはステロイド受容体のことです。

日本の研究ですが、脂肪細胞特異的に発現するアディポネクチン遺伝子の転写制御下に、

Cre遺伝子を発現する「アディポネクチンプロモータCre」を用いて、

脂肪細胞特異的にグルココルチコイド受容体を除去した遺伝子改変マウスを作成しました。

このマウスにステロイドを投与したところ、脂肪組織が肥大する一方で、肝臓への脂肪蓄積が減少し、インスリン抵抗性が改善された、とのことです。

さらに

(1)グルココルチコイド受容体によりコラーゲンに関連する遺伝子の発現が抑制され、これにより脂肪細胞への脂肪の蓄積が妨げられている。 

(2)ステロイドは、脂肪細胞のグルココルチコイド受容体によって、前駆脂肪細胞の増殖を抑制している。 

(3)ATGL(Adipose triglyceride lipase)は、脂肪細胞における中性脂肪分解の主に第一段階を触媒する酵素。グルココルチコイド受容体は、ATGLによって脂肪を分解している 

(4)グルココルチコイド受容体は時計遺伝子Per1を介して糖取り込みを抑制している。 

ということがわかり、

 

脂肪細胞におけるグルココルチコイド受容体の役割として、脂肪細胞への脂肪蓄積の抑制、前駆脂肪細胞の増殖抑制、脂肪の分解、糖取り込み抑制を行っていることが示された。

 

つまり、KOマウスではない正常の人間では

ステロイドはグルココルチコイド受容体に結合し、筋肉や脂肪組織が糖取り込みを抑制し血糖があがることが示されました。(通常であれば、インスリン下で筋肉や脂肪は糖を取り込む)

 

さらにステロイドは筋肉や脂肪組織の異化を亢進することで、蛋白が分解され、アミノ酸となり肝臓にまわり、糖新生が亢進し、結果肝糖放出の促進が増長されます。

それに加えてステロイド自身がインスリンの分泌能を抑制していることもあいまって、血糖が上昇します。

 

インクレチンとは

インクレチン(incretin)

膵臓のランゲルハンス島β細胞を刺激して、血糖値依存的にインスリン分泌を促進する消化管ホルモン

グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(glucose-dependent insulinotropic polypeptide:GIP):上部消化管腸内分泌細胞の K 細胞

グルカゴン様ペプチド-1 (glucagon-like peptide-1:GLP-1):下部消化管腸内分泌細胞のL 細胞

の2つがあります

インクレチンの血中濃度は食後数分~15分以内に上昇し、食後の血糖上昇によるβ細胞からのインスリン分泌を促進

分泌されたインクレチンはジペプチジルペプチダーゼ-4(dipeptidyl peptidase-4:DPP-4)によって速やかに不活性化される。ジペプチジルペプチダーゼ-4(dipeptidyl peptidase-4:DPP-4)は消化管、腎臓、前立腺などの上皮細胞や内皮細胞、リンパ球などの細胞膜に発現し、可溶性タンパク質として血中にも存在している。

 

DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬とは?

DPP-4 阻害薬:インクレチンの分解を阻害することによって血中インクレチン濃度を維持するGLP-1 受容体作動薬:GLP-1アゴニスト。直接インクレイン分泌を亢進させる

 

ステロイド糖尿病にインクレチン製剤がいい理由

一つはステロイド自体がインクレチンの作用を減弱させてしまうので、インクレチンの力を高める製剤が機序にかなっていること

また、ステロイド糖尿病は朝血糖が低く、夜に高い血糖推移パターンが特徴的のため、血糖依存的に血糖を下げるインクレチン製剤が適している(=低血糖のリスクが少ない)

 

皮膚科医侍の実体験

もともとのDM患者でDPP-4阻害薬使用後に発症したBPで、 DPP-4を中止しても改善せず、やむなくステロイド開始して治ったあと、ステロイドDMもひどくなって、DPP-4阻害を再開するか、というと悩ましいですが、GLP-1ならいいですかね。

また、DPP-4使用していない新規発症のBP患者でステロイド投与後にステロイドDMになった

 患者に、エクアとかDM内科から指示があって投与してもBPが悪化した経験はないですね。

糖尿病内科の先生方がステロイド糖尿病で依頼コンサルをかけたときに、SGLT-2よりもDPP-4やGLP-1をよくだす頻度が高いので気になって調べてみました。

 

専門医試験対策

皮膚科には一度DPP-4が英語スペルで書かれてあり、選ぶ過去問がでていましたが、もうでないでしょう・・・。

ただ、ステロイド糖尿病以外にも、ステロイド骨粗鬆症とか、日々の臨床において勉強したほうがいいトピックはまだまだあるので、最近の知見もふまえて、また勉強していこうと思います。

 

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参考文献

Reiko Hayashi, Yosuke Okuno, Kosuke Mukai, Tetsuhiro Kitamura, Tomoaki Hayakawa, Toshiharu Onodera, Masahiko Murata, Atsunori Fukuhara, Ryoichi Imamura, Yasushi Miyagawa, Norio Nonomura, Michio Otsuki, Iichiro Shimomura, Adipocyte GR Inhibits Healthy Adipose Expansion Through Multiple Mechanisms in Cushing Syndrome, Endocrinology, Volume 160, Issue 3, March 2019, Pages 504–521,

 

El Ghandour S, Azar S. Incretin based therapy in the management of steroid induced diabetes mellitus. Curr Diabetes Rev. 2014;10(6):360-3. doi: 10.2174/1573399810666141015102900. PMID: 25316147.

 

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