爪の診察の仕方、爪乾癬、扁平苔癬の所見
爪について 総会e-learningより
本記事のポイントチェック
①爪疾患見るとき 病気は爪母なのか、爪床なのか、爪のまわり(爪郭)なのかを考える
②爪乾癬・扁平苔癬の所見を覚える
+α 爪縦裂と爪縦条 の違いについて
詳しくみていきましょう。
診療の流れ
病気の首座がどこにあるか
①爪母
②爪床
③爪郭
病理
爪床、爪母:顆粒層を経ずに角化
爪母の病態
1 pitting 点状凹窩
爪母で乾癬の炎症により不全角化がおこり、その塊が伸びていく過程で、密着度が弱く剥がれることでpittingがおこる
爪の伸長 0.05(足)-0.1(手)mm/日
爪の爪半月から爪母近位側まで4-5mm
2 爪縦条 縦裂の違い
爪の上側は爪母の近位側が形成する 爪の下側は爪母の遠位側が作っている
縦条(じゅうじょう) 爪の近位が炎症を起こすと爪の表面のみに縦溝が起こる
縦裂(じゅうれつ) 爪母の全長、近位から遠位まで炎症が起こると爪が全層に渡って縦に割れる
(縦条と縦裂の言葉の定義の違いをしっかり使い分けたこと、ありませんでした・・・勉強になった。)
爪床の病態
爪甲は正常。爪床は密着しているだけで、爪甲の産生に寄与しない。
表皮突起、真皮乳頭は平行に配列
爪甲剥離、線状出血、爪甲下角質増殖など
乾癬の爪病変
爪母:pitting 爪甲白斑、爪半月の赤色化、爪甲異栄養
爪床:爪床変色、爪甲剥離、線状出血、爪甲下角質増殖
爪扁平苔癬
爪母に破壊性の炎症が起こる
爪母:爪甲縦条、爪甲縦裂、翼状爪、爪萎縮、爪欠損、近位爪郭の発赤
Trachyonychia
トラキオニキア
爪母に生じた内因性の湿疹(爪母に対する自己免疫反応ともいわれる)
組織検査でも爪母に海綿状態
爪母病変:爪甲縦条、爪表面の塑造化、色素沈着、近位爪郭の発赤、強い掻痒
20-nail dystrophyともいっていたが、最近その病名はあまり使われなくなってきた
専門医試験にでるとしたら
齋藤先生の炎症性疾患の爪の所見は、最近学会でもこのようにご講演されておられますし、ニッピカイ発行の記事でよく拝見しますので、
特に爪乾癬の所見については今後出題があってもいいと思います。
2017年にはこんな問題がでています。
皮膚科専門医試験過去問
2017-21.
関節症性乾癬へ移行しやすいと考えられる乾癬の皮疹部位はどれか.3つ選べ.
1.頭部 2.肘頭 3.臀部 4.下腿 5.爪
答えは135
本記事で取り扱った、爪乾癬もPsAに移行しやすいです。
※ただしこの問題は・・・・
ガイドラインより
「頭部,臀部,爪乾癬が PsA と関連するとした Wilson らの報告は統一した見解となっていないが,爪乾癬で PsA 合併リスクが上昇するという報告は多く 手指付着部炎が波及した結果として起こる爪母病変を反映する 。」
(「II-11 リスク因子」参照)(「II-3 発症メカニズム」参照).
すなわち、頭部、臀部がPsAと関連する、というのは?であり、「爪は関連が高そう」ということは確からしい、ということのようです。
乾癬性関節炎診療ガイドライン 2019
2020年令和2年度皮膚科専門医試験解答
全問題解説つき、別wordの勉強ノート付き
e-learning
第119回総会 EL22-3 爪のかたちの診かたと考えかた~炎症性疾患編~より
齋藤 昌孝先生 (慶應義塾大学医学部皮膚科学教室)
乾癬性関節炎診療ガイドライン 2019
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/PsAgl2019.pdf