ネモリズマブとアトピー性皮膚炎
デルマ侍です。
先日、ネモリズマブと痒疹についての記事を書きました。
ネモリズマブの、アトピーに関する論文からの紹介
京大椛島先生が筆頭著者のNEJMの論文です。
椛島先生、NEJM多いですよね・・・化け物級・・・すごい・・・
マラソンとか運動もされていて、しゅごい・・・あ2回言っちゃった。
Kabashima K, et al: N Engl J Med. 2020 Jul 9;383(2):141-150.
ネモリズマブの日本での治験 NEJMから
日本での第三相試験についてです。
前回紹介したNEJMの痒疹は4-8週でしたが、今回は16週。
特に痒みがひどい中等度から重症のアトピーに対して行われています。
試験の簡単な中身
16週間の二重盲検第3相試験
対象は中等度から重度のそう痒があり、外用剤の効果が不十分なアトピー性皮膚炎の日本人患者
ネモリズマブ(60mg)またはプラセボを4週間ごとに16週目まで皮下投与
外用剤も併用
試験の結果
掻痒感の視覚的アナログスケール(VAS)スコア(範囲:0~100、スコアが高いほど掻痒感が強い)の平均変化率に特に注目
ベースライン時のそう痒症のVASスコアの中央値は75
16週目の時点で、VASスコアの平均変化率は、ネモリズマブ群で-42.8%、プラセボ群で-21.4%であった(P<0.001)
EASI スコアの平均変化率は,ネモリズマブ群で-45.9%,プラセボ群で-33.2%
DLQI スコアが 4 点以下の患者の割合は,ネモリズマブ群で 40%,プラセボ群で 22%
プラセボでも結構下がるのは、外用をしっかりさせるからですか?
論文の結論
アトピー性皮膚炎に対して外用剤に加えてネモリズマブを皮下投与することにより,プラセボに外用剤を加えた場合に比べて,そう痒症の軽減効果が大きかったことが示された。
しかし、より長期かつ大規模な試験が必要である
マルホからの資金提供あり
ネモリズマブとデュピリムマブ
ネモリズマブは、インターロイキン-31シグナルの阻害剤
IL-31
・そう痒症の発生
・炎症を促進
・皮膚バリアの調節
デュピルマブIL-4およびIL-13の阻害
アトピーの痒み itch–scratch cycle
かゆくてかきむしることで、itch–scratch cycle 痒み-掻きむしりサイクル
をおこしてしまいます。
皮膚に直接機械的な損傷を与えると、壊れた皮膚から直接的にサイトカイン(TSLPやIL-33)がでて、それが炎症反応を促進し、掻痒感をさらに悪化させることが知られています。
皮膚から出るのはIL-33、
Th2から出されて知覚神経に結合するのはIL-31
IL-31は痒みにかかわるサイトカインなので、IL-31を阻害することで、このサイクルも抑えることができます。
おわりに
いかがでしたか?
IL31 TSLPあたりは過去問にもでています。
2019-17
問題 アトピー性皮膚炎の痒みに直接関与すると 考えられているサイトカインはどれか.3 つ選べ.
1.IL-4 2.IL-5 3.IL-13 4.IL-31 5.IL-36
該当する設問はこちらでも解説しています。
皮膚科専門医試験の過去問の解答について詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。
noteもやっています。
2018年皮膚科専門医試験の過去問問題解説集解答集を公開中です。
他の年次のものもありますのでnoteから探してみてください。
いつもお読みいただきありがとうございました。
よろしくお願いします。
参考文献:
Kabashima K, Matsumura T, Komazaki H, Kawashima M; Nemolizumab-JP01 Study Group. Trial of Nemolizumab and Topical Agents for Atopic Dermatitis with Pruritus. N Engl J Med. 2020 Jul 9;383(2):141-150. doi: 10.1056/NEJMoa1917006. PMID: 32640132.