壊死性筋膜炎
壊死性筋膜炎のクリニカルスコア
LRINECが使用されていますが、2004年にシンガポールのWongらが報告したもの
石川耕資ら、創傷5(1):22-26,2014より引用
過去問は2018-30
LRINECに含まれている2つはどれ?
1. 血糖値
2. 尿蛋白量
3. 血清 AST 値
4. ヘモグロビン量
5. 血清カルシウム値
LRINEC はLaboratory Risk Indicator for Necrotizing Fasciitis score の略
Hbヘモグロビン
Na血清ナトリウム
Cr血清クレアチニン
血糖値
の値によりスコアリングされ、
低リスク 5点以下
中リスク 6-7点
高リスク 8点
日本語での表はこちら
石川耕資ら、創傷5(1):22-26,2014より引用
この項目はどうやってきまったのかというと、
単変量・及び多変量ロジスティック回帰分析
を行なって抽出している。
壊死性筋膜炎の患者89名と、重症蜂窩織炎又は膿瘍の225名の患者に対して、入院時に行われた血液生化学検査の結果を、単変量・及び多変量ロジスティック回帰分析を行い、
両者の判別に有用な指標として、
CRP WBC Hbヘモグロビン Na血清ナトリウム Cr血清クレアチニン 血糖値
が選ばれたのだ。
Wong CH, et al. The LRINEC (Laboratory Risk Indicator for Necrotizing Fasciitis) score: a tool for distinguishing necrotizing fasciitis from other soft tissue infections. Crit Care Med. 2004 Jul;32(7):1535-41.
もう少し調べると、LRINECスコアが対象されるまえにも、2000年の論文も壊死性筋膜炎とそれ以外の患者の鑑別に必要な項目を多変量解析を行い検討している。
多変量解析では、入院時の白血球数(WBC)が14×10(9)/L以上、血清ナトリウムが135mmol/L未満、血中尿素窒素(BUN)が15mg/dL以上で、NF患者と非NF患者の区別がついた。NF患者の死亡率は、入院時のWBCが30×10(9)/L以上で予測された。また、最終的な治療前に外部施設から転院した患者の死亡率は有意に高かった。 結論としては NF感染症と非NF感染症の鑑別には、客観的な入院基準(WBCとBUNの上昇、血清ナトリウムの低下)が役立つ。NF患者における死亡率の客観的予測因子は、入院時のWBCの顕著な上昇である。
・症例対照研究では、多変量解析では、入院時白血球数(WBC)>14×10(9)/ L、血清ナトリウム<135mmol/ L、および血中尿素窒素(BUN)> 15mg/ dLは非NF患者からNFを区別した。 NSTIではない21名の患者では、いずれも身体検査上で緊迫した浮腫または水疱tense edema or bullaeを持っていなかったことがわかった。 これらの特性の両方について、100%の特異性を示す。 [Am J Surg. 2000 Jan;179(1):17-21.]
Wall DB, de Virgilio C, Black S, Klein SR. Objective criteria may assist in distinguishing necrotizing fasciitis from nonnecrotizing soft tissue infection. Am J Surg. 2000 Jan;179(1):17-21.
CRPやWBC クレアチニン、血糖値は壊死性筋膜炎の鑑別に有用なのはイメージがつくのだが、
ナトリウムとヘモグロビンはイマイチピンとこない。
なぜ壊死性筋膜炎でより下がるのか。
多変量解析
つまり理屈、理論から入ってCRP WBC Hbヘモグロビン Na血清ナトリウム Cr血清クレアチニン 血糖値の項目が選ばれてあるわけではなく
えしきんとそれ以外の患者のラボで有意に差があって違う点を引っ張ってきたらナトリウムやヘモグロビンも鑑別に有用な検索項目だった、
という、
機械的な裏付けのスコアリングだった。
ただし、クリニカルスコアに対しては、議論の余地がある。
Peetermans M, et al.Necrotizing skin and soft-tissue infections in the intensive care unit. Clin Microbiol Infect. 2020 Jan;26(1):8-17.
NSTI患者の初診時には、重篤な全身毒性の特徴が、時として印象の薄い皮膚所見を覆い隠してしまうため、誤解を招く恐れがある。感染は急速に拡大し、手術が遅れると予後が悪化するため、重篤な患者に追加の画像診断を行う役割は限られている。また、クリニカルスコアの有用性については議論がある。壊死組織の積極的なデブリードメントを伴う迅速な手術は、原因究明のために必要であり、微生物学的サンプリングを可能にします。また、広域抗菌薬を迅速に投与することが必要であり、経験的治療と、単菌性のA群連鎖球菌やクロストリジウム菌のNSTIに対する標的治療の両方において、毒素産生に効果のあるクリンダマイシンを追加することが望ましい。免疫グロブリンや高気圧酸素療法の役割については、依然として議論の余地があります。
壊死性筋膜炎を疑う所見
・適切な抗菌薬治療に反応を示さない
・バイタルが不安定、皮膚病変が進行する
・病変が筋膜層で容易に剥離する
・触診や画像所見で軟部組織内にガスを伴う
・急速に病変が拡大する
・皮膚が紫色に変色し、水疱や出血を認める
・皮膚所見で想定すること重症度以上に痛みが強い
・発赤部を超えた周辺部にも強い圧痛を認める(→Pain out of proportion)
引用
本郷偉元編:Step up 式感染症診療のコツ, 文光堂,p174-178,2013
壊死性筋膜炎の抗菌薬治療終了の条件
・追加のデブリードマンが不要
・臨床的に改善している
・48-72時間発熱がない
Stevens DL eat al; Infectious Diseases Society of America. Practice guidelines for the diagnosis and management of skin and soft-tissue infections. Clin Infect Dis. 2005 Nov 15;41(10):1373-406.
過去問は2018-30
LRINECに含まれている2つはどれ?
1. 血糖値
2. 尿蛋白量
3. 血清 AST 値
4. ヘモグロビン量
5. 血清カルシウム値
答えは14
でした。
カルシウムでなく、ナトリウムだったら○
参考文献
石川耕資ら、創傷5(1):22-26,2014より引用
Wong CH, et al. The LRINEC (Laboratory Risk Indicator for Necrotizing Fasciitis) score: a tool for distinguishing necrotizing fasciitis from other soft tissue infections. Crit Care Med. 2004 Jul;32(7):1535-41.
Peetermans M, et al.Necrotizing skin and soft-tissue infections in the intensive care unit. Clin Microbiol Infect. 2020 Jan;26(1):8-17.
本郷偉元編:Step up 式感染症診療のコツ, 文光堂,p174-178,2013
Stevens DL eat al; Infectious Diseases Society of America. Practice guidelines for the diagnosis and management of skin and soft-tissue infections. Clin Infect Dis. 2005 Nov 15;41(10):1373-406.