食物アレルギー診療の基本
食物アレルギー診療の基本
皮膚症状をきたす症例が多いため、皮膚科にかかることも多いです。
なのになんだかしっくりこない。曖昧な部分が多い。検査をしても陰性だし。そんなふうにおもっていないでしょうか。
この分野は過去問にもよくでるので、勉強します。
食物アレルギーの原因
食物アレルギーの全年齢の原因植物は卵、牛乳、小麦が大半
0歳でも卵、牛乳、小麦が三大アレルゲンであるが
成人移行は 小麦、魚類、甲殻類、果物が多い。
乳児・幼児早期の即時型食物アレルギーの鶏卵、乳製品、小麦は加齢とともに耐性をもつようになる(=アレルギーを起こさなくなる)。その頻度は3歳までに50%、学童までに80-90%といわれる。
成人発症の小麦、魚類、甲殻類、果物、そば、ピーナッツ などは、乳児期発症に比べると耐性獲得の頻度が低い
IgE依存性即時型アレルギーの機序
マスト細胞、好塩基球の細胞膜に発現しているFcεRI(高親和性IgE抗体)に形質細胞が産生したIgEが結合する。そのIgEにアレルゲンが結合することでケミカルメディエーター(ヒスタミン)を放出する。その結果、じんましん、かゆみ、アナフィラキシーショックなど、アレルギー症状を引き起こす。
IgE依存性即時型アレルギーの診断のための検査
以下を覚える
血液検査:血清中抗原特異的IgE検査、好塩基球活性化試験
皮膚テスト(プリックテスト、スクラッチテスト)
血清中抗原特異的IgE検査とは?
患者の血清に「抗原(卵、小麦など)を内蔵したカプセル」をまぜあわせる
→血清中に抗原に対するIgEが存在すると(トレーサー基質をくわえて)蛍光を検出する
これが汎用されているイミュノキャップ法ImmunoCAP法(サーモフィッシャー社)
しかし、本検査にも感度、特異度ともに低く、問題がある
(→FDEIAで小麦、グルテンが陽性にならない。小麦アレルギーがないアトピー性皮膚炎でも偽陽性となる)
ImmunoCAPに用いられているアレルゲンは
「アレルゲンの原料から粗く抽出した、さまざまなアレルゲンの複合体である可溶性のアレルゲン租抽出物」を使用している。しかし、実際に患者の原因となっているアレルゲンはそのなかのごく一部の特異的アレルゲンによる、とわかってきた。
この特異的アレルゲンをリコンビナントアレルゲン、精製アレルゲンとよび、
交差反応性アレルゲンとあわせてアレルゲンコンポーネントと呼ぶ
アレルゲンコンポーネント:アレルゲンを構成する個々のタンパク質成分。
食物依存性運動誘発アナフィライキシー FDEIA
小麦やえびなどに多い
学童期移行は、原因食物摂取+運動かNSAIDs内服の誘発 →発症
原因食物を摂取するのみでは発症しないため、診断が付けづらい
FDEIA患者においてImmunoCAPでの小麦RAST31.4%、グルテンRAST陽性37.0%
FDEIAの原因光源は、小麦タンパク質のうち、グルテン蛋白のω-5グリアジンが80%、グルテン蛋白ののグルテニン高分子量が20% その原因とわかってきた
(小麦immunoCAPののアレルゲンは、非グルテン蛋白の可溶性のアルブミン、グロブリンの複合体
グルテンimmunoCAPには、ω-5グリアジンと高分子グルテニンも含むが、分子量が少なく他の物質も含むため陽性が出にくい)
特に、成人例のFDEIAの原因蛋白はω-5グリアジンが多い。
豆乳アレルギー
大豆特異的IgEが陰性だったら
・皮膚テストで大豆アレルゲンを試す
・Gly m 4 immunoCAPアレルゲンコンポーネントを検査する(大豆特異的IgEが陰性でもGly m 4は陽性となる)
・ハンノキの抗原と交差する
アレルゲンコンポーネント
・保険収載となっており、2018年までは8種保険診療で検査ができた
2018年にクルミとカシューナッツに保険が通り、計10種保険適用となっている
この表+くるみ。カシューナッツ。
粗抗原 コンポーネント タンパク質 タンパク質スーパーファミリー
卵白 Gal d 1 オボムコイド
牛乳
Bos d 8 カゼイン
小麦 Tri a 19 ω-5グリアジン
大豆 Gly m 4 PR-10
ピーナッツ Ara h 2 2Sアルブミン
ラテックス Hev b 6. 02 ヘベイン
試験にでてきたBet v1は保険適応でないけど・・・?
過去問にBet v1を書かせる問題がありました。(2018-記述6)
シラカバの原因アレルゲンコンポーネントのBet v1は保険適用になっていません。
しかし、保険適用になっているGly m 4大豆のアレルゲンファミリーのPR-10のグループに属するため、Gly m 4を検査することで、花粉、食物抗原のアレルギーを疑うことができる。
皮膚テストで使うアレルゲン
鳥居薬品、アレルゲンスクラッチエキストリイが70項目程度販売されている
花粉食物アレルギー症候群
バラ科:りんご、もも
→シラカンバ(Bet v1)、ハンノキ(Aln g 1)と交差する
過去問2020-52
過去問
2020-52
30 歳の男性.3 月に北海道へ旅行に行った 時,鼻汁・くしゃみなどを生じたことがあった.数 日前にリンゴを摂食した時に口唇から口腔粘膜にしびれ感を生じた.この症状の原因として可能性が最も高いアレルギーコンポーネントはどれか.
1.Ara h 2 2.Bet v 1 3.Gly m 4 4.Cry j 1 5.Der f 1
2020-52皮膚科専門医試験 対策 解答 - デルマ侍の皮膚科専門医試験 解答徹底解説
2019-19
アレルゲンコンポーネント特異的IgE 検査のうち正しい組合せはどれか.2つ選べ.
1.卵白 ――――――――Gal d 1
2.牛乳 ――――――――Bos d 8
3.大豆 ――――――――Ara h 2
4.ピーナッツ ―――――Bet v 1
5.ラテックス ―――――Gly m 4
2019-19 皮膚科専門医試験過去問解答 専門医試験対策 - デルマ侍の皮膚科専門医試験 解答徹底解説
2019-64
口腔アレルギー症候群でリンゴやモモとの関連が最も高いのはどれか.2つ選べ.
1. ヒノキ
2. カモガヤ
3. ハンノキ
4. ブタクサ
5. シラカンバ
2019-64 皮膚科専門医試験対策 - デルマ侍の皮膚科専門医試験 解答徹底解説
2018-記6
大豆抗原であるGly m 4と高い相同性を有し, PR-10 に属するシラカンバ花粉のアレルゲンコンポーネントを記せ.
2016-53
食物アレルギーと主なアレルゲンとの組み合わせで誤っているのはどれか.
1.豆乳 ――――― Gly m 4
2.納豆 ――――― ポリガンマグルタミン酸
4.車海老 ――――― トロポミオシン
5.ピーナッツ ――― ヘベイン
おわりに
2020年令和2年度皮膚科専門医試験解説解答を公開しています。
e-learningより
第119回総会 EL27-1 最新の知見から学ぶ食物アレルギー診療の基本
千貫祐子先生 (島根大学医学部皮膚科)