抗アレルギー薬のまとめノート 使い分け
デルマ侍です。
抗アレルギー薬、抗ヒスタミン薬のまとめです。
実臨床にも有用になってきますのでまとめて整理して暗記していきます。
初期研修医や内科、救急科など幅広い先生方にご活用いただけるかと思います。
また、皮膚科の専門医試験にもよく出たことがあります。
車や機械の運転が可能な薬剤
ざっくり、車の運転が可能か、だめか、の分類で覚えます。
正確には、車以外にも「機械の操作」も含まれてきます。
工事車両やフォークリフト、もちろん飛行機、ヘリなども含みます。
車運転がだめな部類にも、だめな強さに差がありますので解説してきます。
・車運転OK(重機、フォークリフト運転もOK)
アレグラ、ディレグラ、
クラリチン(ロラタジン)、デザレックス(デスロラタジン)
ビラノア
(ルパフィンの活性化代謝物がデスロラタジン=デザレックスでデザレックスは運転可能
しかし、ルパフィン(ルパタジン)は眠くなるので車運転できない。
ルパタジンは肝臓において活性代謝物であるデスロラタジンに代謝される)
・車運転 注意 (OKではない)
アレジオン(エピナスチン)
タリオン
たとえば、アレジオンの添付文書には「重要な基本的注意」として、「眠気を催すことがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に注意させること。」と書かれています。下の項目の添付文書の文言と比較してみてください。タリオンも同じ感じです。
・車運転 禁止
アレロック(オロパタジン)
ザイザル(レボケチリジン)
ジルテック(セチリジン)
ルパフィン(ルパタジン)
たとえば、アレロックの添付文書には「重要な基本的注意」 として 「眠気を催すことがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作には従事させないよう十分注意すること。」と記載されています。
アレジオンもアレロックも結局どちらの車運転NGですが、強制力の強さが添付文書で違うことがわかります。
とにもかくにも添付文書は大事です。
増量が可能な薬剤
増量が添付文書上書いてあって認められているのは
ザイザル、ジルテック、ルパフィンのみ
倍量投与可
たとえば、ザイザルは1T5mgですが、添付文書で「通常、成人にはレボセチリジン塩酸塩として1回5mgを1日1回、就寝前に経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、最高投与量は1日10mgとする。」と書かれています。
添付文書上、タリオン、アレロック、アレグラ、(エバステル)は、適宜増減可、の記載のみで、倍量投与については正式に書いていないことは、実はあまり知られていません。
タリオンやアレロックを倍量でだしても、切られたことはありませんが、処方箋のコメントに「症状増悪のため倍量」とか、書いたりしています。
エバステルは「通常、成人には、エバスチンとして1回5~10mgを1日1回経口投与する。 なお、年齢・症状により適宜増減する。」なのですが、基本10mgから出してしまうことが実際多いです。
内服のタイミングに指示があるもの
ビラノア、ディレグラ 空腹時
ジルテック、ザイザル 就寝前
レミカット、アレロック 朝食後、就寝前
クラリチン 食後
ザイザルを夕食後、アレロックを朝・夕食後で処方している先生をしょっちゅうみかけますが、添付文書上はNGです。
アレロックは添付文書上は「朝・就寝前」としか書いていなくて、食後とは書かれていません。朝であればいいようです。まあ、普通他の薬と合わせて食後の方が楽だよね・・・(←この理由で自分はあんまりビラノア好きくありません。)
内服のタイミングには指示がないもの
食後とか関係ない薬剤です。 1日1回〜とかしか書いていません。
エバステル、ルパフィン、タリオン、デザレックス、アレグラ、アレジオン
妊産婦に使いやすい薬剤
今日の治療薬、添付文書からの「使いやすい」「すすめやすい」抗ヒスタミン薬は以下です。
・妊婦にもすすめやすい※
ジルテック、ザイザル
・授乳中にもすすめやすい※
ジルテック、ザイザル、アレグラ、クラリチン
筆者の個人的には、ザイザル推しです。
ザイザルの添付文書は
「妊婦、産婦、授乳婦等への投与 」の項目で
「妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。」
授乳中の婦人には本剤投与中は授乳を避けさせること。」
とされています。添付文書の冒頭に登場する「使用上の注意」の項目には記載がありません。
ちなみに、クラリチンは、
添付文書の頭のほうに記載のある、「特定の背景を有する患者に関する注意」に、
「 妊婦 妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、投与しないことが望ましい。」
「授乳婦 治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。ヒト母乳中への移行が報告されている。」
と書かれています。
ザイザルのほうが、クラリチンよりも注意が弱いんですよね。
こんな記事も書いています。
乳児・小児での使用について
ザイザルは錠では7歳から
ザイザルシロップは生後半年から使用可能で用法用量も添付文書に記載があります
クラリチンは錠剤はザイザルと同じ7歳から、ドライシロップは3歳から使用可能です
どうせ妊産婦に使うなら、乳児期、初期から使用可能な薬のほうが比較的安全、好ましいのではないでしょうか?というのが個人的な意見です。
添付文書の大事なポイント
当たり前ですが、添付文書は大事なこと、見逃してほしくないことから先に記載しています。
禁忌が一番上です。記載の順番が違う、ということからも薬屋さん的には安全性の推奨の強さが異なっている、ということが伺えます。
※今日の治療薬や各種本ではこれらの薬を「すすめやすい」薬として提示していますが、
あくまで、「すすめやすい」であり、添付文書では「有益性が勝る時に投与」の「注意」の項目に含まれています。
臨床的には患者に説明の上、使用して大きな問題になることはないと個人的に考えています。が厚労省やPMDAが保障しているわけではありません。
妊娠産婦には絶対OKという薬は、抗ヒスタミン薬に限らず、基本的にはないです。
皮膚科の専門医試験対策的には添付文書になんと書かれているか、が大事です。
腎機能低下の時の薬
・「腎機能別薬剤投与量一覧」上には腎臓機能低下の減量の具体的な指示が書いていないもの
エバステル、アレジオン
「腎機能別薬剤投与量一覧」に書いていないけど、腎機能低下の人には慎重投与、注意が必要
ビラノア、ルパフィン、クラリチン、デザレックス
例えば、アレジオンは添付文書で「慎重投与」に「肝障害又はその既往歴のある患者」と書かれています。添付文書にははっきりとは記載がありませんが、「腎機能別薬剤投与量一覧」やエキスパートオピニオンでCKD HD患者でも減量の必要がなし、とされています。
それでは、皮膚科専門医試験で過去に出題された問題をみてみましょう。過去問から。
→
過去問 2018-86
問題 86.腎機能障害患者に慎重投与の必要性が記載されていない薬剤はどれか.
1.ビラスチン 2.ロラタジン 3.エピナスチン 4.オロパタジン 5.ベポタスチン
答えは3
腎障害に注意すべきは、
尿中未変化体排泄率の高い(70%以上)薬物
腎機能低下により体内に蓄積しやすい
腎障害あるときはアレジオン、エバステル
が使えます。
「腎機能別薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会 JSNPもご覧ください。
おわりに
いかがでしたか?
参考になれば幸いです。
皮膚科専門医試験対策情報発信中。noteもやっています!
他にもいろいろと記事を書いています。
ヒスタミン薬の使い分けについてはこちら
OTCについてはこちら。
コロナワクチンにからめて抗ヒスタミン薬の成分比較しています。
小児への抗ヒスタミン薬のまとめ、はこちら。
2018-86
答え3 エピナスチン アレジオン
お読みいただきありがとうございます。
今日もお読みいただきありがとうございました!
皮膚科専門医試験対策、過去問の答え、勉強の仕方など、引き続き情報提供していけたらと思っています。
よろしくお願いいたします。