皮膚筋炎の歴史、今はサブセット分類に
デルマ侍です。
皮膚筋炎は、抗体によるサブセット分類が話題です。
セミナリウム でも学会の講演でもよく聞くトピックスになっています。繰り返し勉強します。
抗体によるサブセット分類
一対一で覚えて試験にもでているのが
・抗ARS抗体 慢性間質性肺疾患の合併、メカニックスハンドが多い
・抗TIF1-γ抗体 50-70%で悪性腫瘍
・抗MDA5抗体 急速進行性間質性肺炎の合併、死亡率が高い
皮膚筋炎は抗核抗体が陰性!?
皮膚筋炎は当初、「自己抗体が関与しない膠原病」と考えられていました。
今となってはもうその感覚がピンと来ませんね。
その理由は、抗核抗体が陰性の場合が多く、さらに昔は抗Jo-1抗体のみしか検査ができなかったからです。(抗Jo-1抗体は、ARS抗体の代表的なもので、抗核抗体ではありません。抗細胞質抗体です。)
実際に色々調べられるようになった現在では、
抗核抗体陰性の皮膚筋炎もあれば、陽性のものもあることがわかっています。
抗TIF1-γ抗体は、抗核抗体のspeckledで低力価陽性
抗Mi-2抗体は、speckledパターンで高力価陽性
です。
他、まだ皮膚科専門医試験の選択肢では登場していませんが、
抗NXP2抗体も抗核抗体speckledで低力価陽性
抗SAE抗体は、speckledパターンで高力価陽性
です。
皮膚筋炎関連の過去問
過去問で出ていたのが、「皮膚筋炎の石灰沈着は、小児例で多いが成人では少ない」
もありましたね。
TIF1-γについては、
2021年皮膚科専門医試験でも出題されました。
(2021-記6)
これまでにこんな記事も書きました。
皮膚筋炎では、病理でinterface dermatitisが見られることも特徴的です。
特にMDA5抗体、TIF1-γ抗体陽性例では60-70%で見られるとの報告もあります。
2020年令和2年度の皮膚科専門医試験では、こんな出題もありました。
おわりに
いかがでしたか。
膠原病関連の出題をまとめて解説したシリーズもあります。
同じ様な問題は並べて勉強することをおすすめしています。
お読みいただきありがとうございました。
2017年平成29年度の皮膚科専門医試験備忘録
デルマ侍です。
2017年平成29年度の皮膚科専門医試験の講評についての備忘録になります。
この様な記事も書いています。
2017年平成29年度の皮膚科専門医試験
2017年の皮膚科専門医試験は
2017年8月6日日曜日でした。
開催場所は東京の都市センターホテル。
これまでを振り返ると、
2018年までは口頭試問があり、
2019年から筆記試験のみに。8月の開催は2019年がLAST
2020年も夏の開催予定でしたが、オリンピック、新型コロナの影響で11月に延期
2021年ははじめから11月予定となっていました。
2022年以降は12月に試験が実施される予定です。
合格率
2017年の受験生は213名 男性83名 女性130名
合格者は男性58名 女性108名
合格率は男性69.9% 女性83.1%と差が付きました。全体の合格率は77.9%でした。
合格率の推移、他科専門医試験との比較については、こちらでもまとめています。
また、皮膚科専門医試験は、得点率60%で足切りにするのではなく、だいたい合格率、不合格率を揃えるために、試験結果後に微調整をしている可能性があります。
その年のテストが難しすぎて、平均が下がった場合、ボーダーラインは55%とも言われています。
過去の受験者の自己採点結果と合否について、こちらでもまとめています。
自分的には全く興味のないデータですが、支部ごとの合格率も毎年発表されています。
支部で比較すること意味あります?????
2017年は東京支部が83.0%と1位
西部支部が70.5%の4位でした
専門医試験の中身
午前中に筆記試験、午後に口頭試問がありました。
(※2018年を最後に、口頭試問は現在廃止されています)
筆記試験 選択問題93問、記述問題7題
面接問題19題(5カテゴリー)
でした。
(問題数は2019年から選択100題、記述20題となっています)
合否は、
筆記試験(選択、記述)、口頭試問、事前の書類審査から判断されますが、
「事前に委員会で定めた一定の基準を適用して合否を判定」とされています。
色々と噂がありますが、
各セクションごとに定められたボーダーを一つでも割ったら不合格となるのか、総合して合わせたボーダーで不合格が決まるのか、については、公表されていません。
採点除外
なし
正答率が低かった問題、講評
識別指数マイナスは1問ありました。
識別指数マイナスとは、「成績上位者の方が下位よりも正答率が悪かった」問題のことですが、
2017年は問題93のノーベル賞の問題がそうだったようです。
正解は
「黄熱およびその治療法に関する発見」でしたが、
「抗体の多様性に関する遺伝的原理の発見」が42%だったようです。
ノーベル賞の問題は2021年にも再度出題されました。
はたして、今回は識別指数マイナスを払拭できるのか。注目です。
試験委員長
専門医試験委員長は、相馬良直先生でした。
おわりに
いかがでしたか。
別の年度の講評もあります。
2017年平成29年度の皮膚科専門医試験の解説はこちらから。
お読みいただきありがとうございます。
ワセリンの違い
デルマ侍です。
こんにちは。
今日はワセリンについて。
ワセリンには、日本では2つ。
局方ワセリンと、サンホワイトがあります。
ワセリンの違い
サンホワイトのほうが基本的に「高くて質が良く安定性も高い」です。
局方ワセリンには臭いがあり、元々の色もやや黄色、酸化しやすく日光に当たると数時間で黄色になります。
局方ワセリンは、アレルギー性接触皮膚炎の報告があり、その原因は、多環式芳香族炭化水素ではないかとも言われています。
サンホワイトは、特殊な方法で精度をあげることにより、多環式芳香族炭化水素を大幅に少なくしているとのことです。
サンホワイトが使用されている軟膏
精製度の高いサンホワイトが使用されている軟膏は、
・アンテベート軟膏
・ロコイド軟膏
・キンダベート軟膏
があります。
おわりに
いかがでしたか?
いつも使っているワセリン。基材としてもとってもはいっていますが、
実は種類があり違いがあります。
ワセリンでかぶれることもたまーにあることは頭に入れておくといいかもしれません。
お読みいただきありがとうございました。
参考文献:
手元に1冊!皮膚科混合・併用薬使用ガイド<増大号>Derma 2021年10月
2021年令和3年度の皮膚科専門医試験合格発表は1週間後!
デルマ侍です。
2021年11月7日、京都で皮膚科学会の専門医試験が実施されました。
受験生の皆さん、本当にお疲れ様でした。
試験結果はなんと、1週間後にみなさんの元に届きました・・・。
これは例年最速!です。
早すぎますね。
合格された先生方、本当におめでとうございます。
試験勉強、大変なこともあったかと思いますが、必ず先生方の血肉となりますし、今後の臨床に役立つと思います。
我慢していたことがあれば今思う存分やってみてくださいね!お疲れ様でした。
どんどん早くなっています。
2020年もそれ以前の歴史の中では最速で試験2週間後。
今年はさらにはやくなって、試験1週間後でした。
2020年までの合格発表のタイミングについてはこちら。
11/12-13頃から、日本皮膚科学会HPのマイページをみて、専門医番号が掲載されていれば合格、という、書類通知の前のフライング発表もありました・・・。
これも例年にはないことです。聞いたことがありません。
今年から、今年受験して合格した受験生→晴れて専門医!の皆さんは、正式な12月の認定の前からも、指導医講習会を受講すれば認められる、
といった特例もあったので、専門医番号のシステム登録も早かったのでしょうか・・・?
指導医についてはこちらから。
令和3年度の皮膚科専門医試験のスケジュールは、
2021年11月7日 皮膚科学会の専門医試験
2021年11月12日 皮膚科学会ホームページ上でフライング合格発表
2021年11月15日〜16日 東京から近い地域の先生は15日、多くの先生は16日に結果通知を受け取る
こんな流れとなりました。
こんな記事も書いています。
来年の皮膚科専門医試験は12月を予定されています。
書類の締め切りなどは公開されていませんが、
おそらくは7月末締め切りになるのではないでしょうか。
今後の発表があり次第、ブログやnoteなどでも解説させていただきます。
2021年皮膚科専門医試験の解説集
2021年皮膚科専門医試験の解説集を公開しました。
勉強になるよう、色々な話題に触れながら作っています。また受験生の方が間違えそうな他の選択肢についても解説を多くいれるように工夫しています。
ぜひご活用ください。
おわりに
引き続き本ブログでは、試験勉強の他、
皮膚科専門医試験の制度、テストの書類について、
他、皮膚科専門医試験の更新についてなど、いろんなトピックを触れていこうと思っています。
またおよみいただければ嬉しいです。
noteでも皮膚科専門医試験対策を行っています。
よろしくお願いします。
皮膚科で使う抗生剤
デルマ侍です。
以前抗生剤 特に内服について、
第一世代セフェム系が使いやすい、という記事を書きました。
今日は蜂窩織炎などのケースでの抗生剤使用について書いて行きます。
なんとなく、で使うことも多いと思いますが、復習していきます。
ペニシリン系
よく使うのは、ペニシリンとβラクタマーゼ阻害薬との合剤です。
・オーグメンチン配合錠 アモキシシリン+クラブラン酸
・ユナシン アンピシリン+スルバクタム
・ゾシン タゾバクタム+ピペラシリン
オーグメンチンは起因菌が特定できないような蜂窩織炎、咬傷などに有効です。
アモキシシリンの量を増やす目的で、オグサワの処方をすることもあります。
逆に、起因菌が特定できるような、つまり、皮膚表面の手術前後の感染予防で黄色ブドウ球菌をカバーできればいい場合は第一世代セフェムのケフレックス、ケフラールがよい適応となります。
ユナシンは糖尿病性足壊疽の感染コントロールにも有効とされています。
ゾシンは緑膿菌もカバーできますが、緑膿菌のみであれば、ペニシリン十分量単独のみでよいため、複合感染を疑う場合に投与することが考えられます。
ペニシリンの中の、広域とされる、ピペラシリン
こちらは一部軟部組織感染で使うことがありますが、あまり皮膚科では出番がないと思います。
セフェム系
MRSAではない黄色ブドウ球菌、連鎖球菌をカバーする場合は、
セファメジン(セファゾリン)や、ケフレックス(セファレキシン)を使用します。
壊死性筋膜炎の診断には至らないけれども、腫脹が強く水疱、血疱を伴うような「重症蜂窩織炎」と考える際には、クリンダマイシンを併用することも経験上あります。
投与量
投与量は
ユナシン 1.5g q 6hr iv → 3.0g q 6hr v
ゾシン 4.5g q 8hr or q 6hr iv
オーグメンチンをオグサワで出す際は、
オーグメンチン1回1錠+サワシリン(アモキシシリン)1回1錠 1日3回PO
セファメジン 1g q 8hr iv
ケフレックス 1回1錠250mg 4回/日
ケフラール 1回1錠250mg 3回/日
侍の処方
臨床ではこのように使っていますが、一例として。みなさまのご意見あれば、コメントかTwitterくださると嬉しいです。
軽くない蜂窩織炎 入院
入院してくれない症例はオグサワ
溶連菌っぽい蜂窩織炎、丹毒はユナシン
(本当はペニシリン単独でいってみたいですが・・・勇気がでず)
(黄色ブドウ球菌っぽい〜とか、溶連菌っぽい〜というのは見分け方があって、論文でも議論しているものもあります。培養の陽性率は30-40%とも言われるので、臨床の違いは結構使えます。いつか記事にします。)
猫咬傷 オーグメンチン
深いときはオグサワ
犬咬傷 傷にもよるが軽いときは処方しない。これも洗います。
炎症性粉瘤 処方しない そのかわりよく洗う!洗う!洗う!
抗炎症効果を期待して、ミノマイシンやルリッドを出すことはあります。
感染性粉瘤 未治療DMがある場合などは、ミノマイシンやルリッドか、ケフレックスを使用することがあります。
こんな記事も書いています。
おわりに
いかがでしたか。
動物咬傷について、このような記事も書いています。
犬咬傷は見極めれば抗生剤なくてもしっかり治ります。
生検や手術も抗生剤は基本的にあまり出しません。(植皮などを除く)
DMがあったり、傷の手当がうまくできなさそうな場合は出したりします。
出さなくても傷の経過は綺麗です。
縫合も外傷や小手術は非滅菌手袋でいいとおもっている派です。
またお読みいただければ幸いです。
JDのインパクトファクターとその歴史
デルマ侍です。
今日はJDについて。
JDA letterが面白かったので、記事にします。
以前こんな記事も書いています。
JDのインパクトファクター
JDのインパクトファクターが4を超えました。
ついに、ついにですね。ちょっとずつあがってきています。
学会のお偉いさんからしたら嬉しいですが、
我々下々からしたら、論文が載りにくくなる=お高く止まられる のでちょっといやですが・・・・。
2020年のIFは4.005 だったようです。全体の順位は皮膚科関連雑誌の中で18位のようです。
JDはジェイディーと読みます、上の先生にサラッと言われたら知らないと聞き取れないかもしれません。
The Journal of Dermatologyで日本皮膚科学会の雑誌の英語版です。
日本皮膚科学会はにっぴかいと呼びますね。
日本臨床皮膚科医会はにちりんぴ。
JDのインパクトファクターは2003年で0.633
投稿本数は1日1編、一年350編だったとのことです。
週によってお一人のassociate editorに対して10編以上担当してreviewerを決めていた、とのことです。
2020年には1812編の投稿論文があったようです、だいぶ増えましたね。
採択率も書いてありました、2020年で26.37%
editorとは
JDでは
chief のeditor(Editor in-Chief)編集長の下にassociate editor編集者
そして、分野ごとのeditor → section editorがいます。
reviewerを決めるのはsection editorです。
その分野の専門の教授が、その分野について詳しそうな教授やスタッフなどに査読をお願いするのです。
associate editorがたくさんいる場合もあります。その場合はsection editorと同じような意味合いと思います。
JDがどうかわかりませんが、論文によってはsection editorがreviewerを兼ねることもあります、厳密には避けた方がいいようですが。
2021年からはEditor in-Chiefが、門野先生、associate editor宮垣先生のようです。
Case reportの立ち位置
研究論文ではなく、症例報告を英語でかく時、
500wordsのletterを書くことがあるのではないでしょうか。
日本における代表的な投稿先は、このJDのletterです。
門野先生のコメントからは「臨床上貴重な症例報告をこれからも大事にしたい」「一方で雑誌のインパクトファクターを守るためにはレターの割合を一定以内に抑える必要がある」「今まで採択できたような症例報告も掲載を見送らざるを得ない場合が増えてきている」
とのこと。
投稿する側からしたら、うーんですよね、
載せて欲しいですよね・・・・。
せめても少し載せるためにすることしては、
内容の重要さ貴重さはもちろん、
引用論文になるべくJDの論文を使うことですかね・・・。
おわりに
お読みいただきありがとうございました。
こんな記事も書いています。
またお立ち寄りいただけると嬉しいです。
引用元:
JDA letter
Pork-cat syndrome とは
デルマ侍です。Pork-cat syndromeって知っていますか?
Pork-cat syndrome
Pork-cat syndrome
原因抗原は豚の血清アルブミン(Sus s)
この豚のアルブミンと似た構造をもつ、ネコの血清アルブミン(Fel d 2)に経気道的に感作された後、交叉反応によって豚肉摂取時にアレルギー症状を呈する疾患
です。
ネコを飼っている人は、抱っこしたっり掃除したり、ひっかかれたり。一緒に生活しているだけで、感作されることがあるかもしれません。
Pork-cat syndromeでは、経皮ではなく、経気道的 な感作といわれています。
感作されたのち、猫血清アルブミンと構造の一部が似ている豚肉を食べることにより、
体が勘違いし、アレルギー反応を引き起こします。
問診
患者さんへの問診は
ペット、ネコの飼育歴の有無を聞きます。
特に数年以上飼っている方がリスクが上がります。
豚肉摂取後30分程度で発症するとされています。
検査
豚肉やネコの特異的IgE検査を行います。
プリックテストも有効。
参考文献:
増刊号特集 最近のトピックス2017 Clinical Dermatology 2017
おわりに
いかがでしたか?
また勉強を続けて行きます。
お読みいただきありがとうございました。